WORKS DETAIL
製作事例詳細
- お客様名
- 菊乃井本店 様
当社製作漆器明月椀
PRODUCT INFORMATION
- 木地
- ハンサ
- 塗り
- 本堅地 皆洗朱
- 螺鈿
- アワビ貝 桜色彩色
- 椀物
- 甘鯛と筍 うすい豆の摺流し
製作覚書き
MAKING RECORD
明月椀は織田有楽斎が鎌倉の明月院に寄贈したと伝えられる椀揃えが本歌となります。
今まで多くの写しが作られてきましたが、この椀は菊乃井ご主人、つまり料理を作る側の感性がよく表れていて、本歌とも一線を画す椀にりました。具体的には木地を少し大きくし煮物椀サイズに挽いています。また全体を明るい色調の洗朱に塗り、貝には桜色の彩色をほどこしました。
時代が桃山から令和に変わり、場所が鎌倉から京都に変わり、この椀は単なる写しを超えて、菊乃井ご主人から有楽斎への敬意を込めたアンサーなのだとも思えます。侘び寂びから離れ、春のひと日を寿ぐような華やかさがあり、いかにも菊乃井ご主人らしい椀です。
技術的な面で言えば、実は螺鈿の椀は貝の部分が剥落してしまいがちで、何度も繰り返し使用する料理店には不向きな技法といえます。
その点の解決策として、貝の接着には漆ではなく強力な接着剤を使用しました。おかげで数年を経ても、貝部分の剥落は全くありません。
また桜色の彩色にも今日ならではの工夫があります。貝の下にはチタンによる発色のピンクの漆を塗っているのです。
料理店においては実用的であることが重要であると、伝統的漆芸以外の素材使用や技法の意味を認め、チャレンジを後押ししていただいた菊乃井ご主人には感謝申し上げます。
